2019年度、全国高校入試の国語論説文で、
突如5県にわたって出題された
永田和宏『知の体力』(新潮新書)
を取り上げたいと思います。
5県で出題される人気ぶり!
永田和宏の『知の体力』(新潮新書)は、
福島
三重
和歌山
長崎
鹿児島
の5県の
国語試験の課題文として出題されました。
永田和宏『知の体力』新潮新書, 2018.
永田和宏先生は、細胞生物学者であり、
現在は京都産業大学教授、京都大学名誉教授です。
他方で、歌人としての活動も長くなさっており、
歌集もたくさん出ています。
知の体力とは――
運動をするにはそれなりの基礎体力をつけなければならないのと同様に、これから何が起こるかわからない想定外の問題について自分なりに対処するためには、それなりの体力が求められる。私はそれを「知の体力」と呼んでいる。
永田和宏『知の体力』新潮新書、p.47より
著者は人生の大半を研究者として過ごしてきたゆえ、
教育者として若者に触れる機会がなかったといいます。
研究室を出て、新しく大学に入ってきた新入生にも
直接触れるようになった著者が、
大学や研究の意義、勉強と学問の違い、
学問の本質、現代の若者を取り巻く諸問題に対して、
エッセイ風に語りながら、
これまでの研究者としての体験などを交えて、
本質的な知力とは何かについて論考を示しています。
高校入学後、大学進学を目指す受験生にとっては、
必読の書だと言ってもよいでしょう。
大学で学ぶ意味や、
答えのない問いにいかにして向き合っていくのか
という現代的課題の重要性を知ることができるからです。
こうした本書の内容上の観点からも
入試問題にふさわしいと判断され、
5県にわたって出題されたと考えられます。