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2019全国高校入試問題における哲学・思想系課題文①

19年09月02日

 

昨年度に引き続き、

全国の公立高校入試の国語にて、

 

哲学・思想を扱う問題文を出題する都道府県を

ピックアップしていきます。

 

東京都立西高校&埼玉県立入試

 

図らずも2019年度入試において、

都立西高校と埼玉県立高校入試の国語の問題で、

同じ著作から課題文が出題されました。

 

 

課題文出典

 

船木亨

『現代思想講義』

−人間の終焉と近未来社会のゆくえ

ちくま新書、2018.

 

 

著者の船木亨先生は、

西欧近代哲学、現代フランス哲学を専門とし、

 

メルロ=ポンティから親鸞、

アニメにおけるロボットイメージから機械論まで語る

博学多彩な研究者。

 

現在、専修大学文学部哲学科教授です。

一般書籍も多数執筆しています。

 

 

都立西高校の課題文

 

都立西高校の出題箇所は、

 

目下発展しつつあるAI技術について考察を行いながら、

「近代」社会の終焉を確認し、

 

未来を失いつつあるポストモダンとしての

現代社会を憂慮、危惧する内容です。

 

「AIについての悲観的な文章か」といった

理解しかできないようでは、読みが浅いです。

 

この文章は、

われわれが生きるポストモダンとしての現代において、

単なる現在の延長ではない「われわれの未来」が

失われつつあることについて警鐘を鳴らしています。

 

そこで、

AIはわれわれを「未来」の消失からは救ってくれはしないし、

この問題にAIはまったく役に立たないと述べているわけです。

 

そこから、われわれがこれから生きていく時代が、

どのようなものになるのかを考えさせる内容になっています。

 

 

埼玉県立高校入試の課題文

 

埼玉県立高校入試で出題された箇所も、

善悪や徳を扱う点で根本的な問題を扱っており、

善悪を決めることの難しさを示唆する非常に面白い内容です。

 

具体例として、食事のマナーや、

今問題の!自動車運転のマナーを具体例として挙げながら、

ルールとマナーの差異を鋭利に分析し、

 

人々がいかに振る舞うべきか、

他者の振る舞いに対する感受性や

他者に合わせる技量がないことの問題を指摘します。

 

マナーやルールのあり方を考察しながら、

 

これから(外国人も含め)

多様な他者と共生していくためには、

 

どのような振る舞いや考え方が必要かを考えさせられる

興味深い論考です。

 

思想・哲学分野の新書を読んでみよう

 

課題文著者の船木先生は、

2016年に『現代思想史入門』(ちくま新書)を先に上梓しておられ、

『現代思想講義』はその続編とも言えます。

 

都立西高校や県立浦和高校など、

公立高校トップ校を志望するならば、

こうした新書を読んでおくことは、受験対策のみならず、

一般的な教養を滋養する意味でも、必須だと言えるでしょう。

 

特に都立西高校の受験希望者は、

推薦入試対策にも広く役に立つでしょう。

 

入試問題でこうした文章が出題されることは、

「これぐらいは読めるようになっておいてね!」

という高校側からのメッセージですから、

 

国語が得意な人も、

国語の点数を伸ばしたい人も

新書レベルの文章には慣れ親しんでおきましょう。

 

また、埼玉県においてトップ校を目指す人は、

都立西高校の問題を、

 

都立西高校を志望する人は、

埼玉県入試の問題を解いてみるのも一興であり、

 

よい演習になると思います。

 

推薦図書

 

船木亨『現代思想講義――人間の終焉と近未来社会のゆくえ』, ちくま新書, 2018.

 

 

船木亨『現代思想史入門』, ちくま新書, 2016.

 

 

石田英敬『現代思想の教科書』, ちくま学芸文庫, 2010.

 

 

佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』, ちくまプリマ―新書, 2007.

 

 

横山雅彦『大学受験に強くなる教養講座』, ちくまプリマ―新書, 2008.

 

 

 

哲学博士による都立推薦小論文道場(潜龍舎)

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