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2025年度:全国高校入試問題における哲学・思想系課題文

26年01月07日

 

公立最難関への挑戦!偏差値70突破問題集シリーズ【特設ページ】

 

2025年度

全国高校入試問題:哲学・思想系課題文

 

千葉県で出題!

品川哲彦『倫理学入門 アリストテレスから生殖技術、AIまで』

(中央公論新社、2020年)

 

 

現在、関西大学に所属する品川哲彦先生は、倫理学を専門とする泰斗です。2022年度に都立国立高校の国語でも同書からの出題がなされました。本書は入門とするには少しレベルが高い部分もありますが、現代にいたるまでの倫理的な問題を扱っている良書だといえます。千葉県の出題における課題文は、徳倫理学における環境倫理理論についての紹介とそれに対する批判がなされている箇所です。

 

都立西、都立戸山で出題!

朝倉友海『ことばと世界が変わるとき: 意味変化の哲学』

(トランスビュー、2024年)

 

 

朝倉先生は現在、東京大学大学院総合文化研究科教授です。ご専門は、「意味と自己の理論」や近代形而上学です。都立西高校の出題箇所は、客観性とは何かを理解するために、独我論的な意識の立場を想定したうえで、身体や他者の存在からいかにして客観性を獲得するかを確認し、さらに意味が事物とどのような関係を取り結んでいるのかについて論じられる箇所です。簡単にいえば、自分だけの思い込みや自分だけの観点に閉じこもった状態から、どうやって客観的なものの見方を獲得するのか、さらにそのときに意味とはどこにあるのかということについて論じられています。また、戸山高校の出題箇所は、理想が現実に新たな意味を与え、理想が現実を変える力をもつことを確認したうえで、理想は「問い」という形を取り、私たち自身を導き、自己を変革する意味を持つことが論じられる内容です。いずれの出題箇所も本格の哲学的議論であり、中学生にとっては少し難解に思われるかもしれません。

 

都立国立で出題!

戸谷洋志『SNSの哲学 リアルとオンラインのあいだ』

(創元社、2023年)

 

 

戸谷先生の同書は、2024年に岩手県でも出題されました。また、2024年度は福島県、福井県では『未来倫理』(集英社、2023年)が、佐賀県でも『友情を哲学する 七人の哲学者たちの友情観』(光文社、2023年)と戸谷先生の著作からの出題がなされ、近年、入試問題として人気も高い戸谷先生の著作です。

 

国立高校の出題箇所は、フランスの哲学者ベルクソンの哲学(「持続」、「記憶」、「創造的進化」といったベルクソン哲学の主要な概念が正確かつ平易に解説されています)を紹介しながら、自然科学的な法則性やアルゴリズムに還元されない、生命の本質的偶然性によって、SNSを支配するアルゴリズムからの逸脱の可能性を説明する箇所です。この箇所のように、本書はSNSにおいて確認される事象を通じて、ベルクソンのほかにも、ヘーゲル、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、ハンナ・アーレントなどの哲学者の考えにも触れることができます。非常におもしろいので、ぜひ、読んでみてください。

 

神奈川県、滋賀県で出題!

岩内章太郎『〈私〉を取り戻す哲学』

(講談社、2023年)

 

 

岩内先生のご専門は現象学と現代実在論であり、一般向けの書籍も多数出版されています。本書は、私たちがSNS=大量の情報にさらされる事態に放り込まれ、自分自身を喪失したところからいかにして〈私〉を取り戻すべきかについて論じられます。

神奈川県の出題箇所は、VR空間やメタバースにおいてそうした〈私〉をデザインする、「自己デザイン志向」の功罪について論じられる箇所です。サイバースペースにおいて演出された自己に対して、実在の〈私〉には弱さや脆さがあることを認めないと、本当の〈私〉の内実は希薄になることが指摘されます。

滋賀県の出題箇所は、まず、岡田美智男の「弱いロボット」を紹介したうえで、あえて不完全で未熟な形態のロボットの「弱さ」こそが、人間が介入する余地を残すことを確認します。さらに、そうした相互的なあり方について、〈私〉が不完全なあり方をしているからこそ、そこに他者が関係する余地が残される点が述べられ、〈私〉の不完全なあり方によって他者とつながる可能性が示唆される箇所です。いずれの出題箇所においても示唆されているのは、本当の〈私〉を取り戻すには、〈私〉の弱さや不完全さを認める必要があるということです。このお話の続きは、ぜひ本書を読んでもらえればと思います。

 

石川県で出題!

源河亨『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』

( 中央公論新社、2022年)

 

 

現在、九州大学にご所属の源河先生のご専門は心の哲学、美学です。本書の一部を抜粋・修正したもの(「味は味覚だけでは決まらない」)が、三省堂の令和7年度版 中学生向けの教科書『現代の国語2』に収録されています。

 

石川県の出題箇所は、まず、一般に自分の体験する知覚内容(=ここでは色や味が取り上げられる)を言葉でとらえることはできないことについて確認されます。しかし、言葉で知覚を表現する方法や目的について論じられる箇所です。その際の言語の役割についても言及されます。体験そのものを言語化することの意義や意味について論じられており、哲学においては知覚論と言われる分野にあたる内容です。この本も非常におもしろいので、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

長野県で出題!

大嶋仁『1日10分の哲学』

(新潮社、2024年)

 

 

大嶋仁先生は比較文学研究がご専門です。本書は哲学的なテーマを扱ったエッセイのような本です。長野県の出題箇所にも、ベルクソンが登場します。数え上げることができる数値としての「時刻」ではなく、ベルクソン(とフロイト)が主張する、生きられ体験されるものとしての「時間」と「精神の奥深く刻み込まれた記憶」を、若者が歌う歌詞のなかに見出すという内容です。

 

大阪府B問題で出題!

小川仁志『中高生のための哲学入門:「大人」になる君へ』

(ミネルヴァ書房、2022年)

 

 

最近はテレビ東京系列で放送されている『誰でも考えたくなる「正解の無いクイズ」』に小川先生が出演されています。番組のなかでは強烈なキャラクターを見せていますが(笑)、論文や著作などはもちろんちゃんとしており、2023年度の高校入試でも茨城県と山梨県で小川先生からの著作からの出題がなされました。大阪府B問題の出題箇所は、哲学という営みはどのようなものなのかについて平易に説いている内容です。

 

兵庫県で出題!

千葉雅也『センスの哲学』

(文藝春秋、2024年)

 

 

哲学・現代思想分野においては絶対に知らぬ人のいない千葉雅也先生ですが、公立高校の入試問題としての出題は初めてだと思われます。ジル・ドゥルーズの哲学研究から始まり、哲学や表象文化論をご専門とする千葉先生は、ファッション論から現代思想に加えて、小説も執筆・出版するマルチプレイヤーです。兵庫県の出題箇所では、千葉先生による芸術論であり、「そもそも人間が、悪まで含めて途方もない可能性の溢れを生きているということを表現において認めるのが芸術の力」であると主張されます。さらに、悪や不安、不快もふくめた「否定性」があることを考えるのが、芸術やエンターテイメントにとって本質的であるとされます。

 

鳥取県で出題!

吉永明弘『はじめて学ぶ環境倫理――未来のために「しくみ」を問う』

(ちくまプリマー新書、2021年)

 

 

吉永明弘先生のご専門は環境倫理学、公共哲学であり、本書は中高生向けの環境倫理学の入門書です。鳥取県の出題箇所は、日本で初めて環境倫理学をアメリカから日本に導入した加藤尚武の紹介をしながら、「環境倫理は個人倫理ではなく社会倫理である」という認識のあり方について確認する内容です。つまり、環境倫理は「禁欲や自己犠牲といった個人倫理よりも、法や経済といった社会制度の改善に目を向けるもの」であることが述べられています。

 

福岡県で出題!

信原幸弘『「覚える」と「わかる」 知の仕組みとその可能性』

(筑摩書房、2022年度)

 

 

信原先生の文章は、2024年度の長野県、熊本県、2023年度の東京都立入試においても出題されています。近年、入試問題においても人気の信原先生は、「心の哲学」という分野において我が国の第一人者であり、近年はニューロフィロソフィー、ニューロエシックス、ニューロリテラシー等の研究に取り組んでいらっしゃいます。今回の福岡県の出題箇所は、直観的理解の重要性やその在り方について解説される内容となっています。いわく、直観的理解においては、「物事の核心しか意識に現れない」。また、直観は「物事の具体的な姿ではなく、その核心を一挙に捉える」とされます。こうした理解のあり方の重要性が述べられている内容となっています。ここには物事を「わかる」ことの本質があるといえます。本書は、近年よく出題されていることから、中学生のみなさんもぜひ読まれるとよいと思います。入試問題を抜きにして、非常におもしろい内容だと受け合います。

 

名門公立高校受験道場×英俊社

偏差値70突破問題集:国語編

哲学系・生物学系評論文の読解

 

 

哲学博士による都立推薦小論文道場(潜龍舎)

 

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