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2023年度:全国高校入試問題における哲学・思想系課題文

23年09月24日

 

名門公立高校受験道場流

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このシリーズも今年で7年目となりました!

 

藤田正勝『哲学のヒント』

岩波書店、2013年

 

【北海道】

 

2022年度はが福島県、長野県、奈良県、島根県で出題されました。

引き続き2023年度は北海道にて出題されました。

 

平易なことばで哲学の本質に迫る

藤田先生のご著書は受験生も必読です。

 

今回の課題文は「もの」と「こと」

(=両者を合わせて物事という)

から成り立つ世界のうち、

「こと」的世界の豊饒な様相について、

具体的な例とともに語られる内容です。

 

小川仁志『中高生のための哲学入門 ―大人になる君へ―』

ミネルヴァ書房2022年

 

【茨城県】

 

小川仁志『公共性主義とは何か 〈である〉哲学から〈する〉哲学へ』

教育評論社 、2019年

 

 

【山梨県】

 

茨城県、山梨県の二県で

小川仁志先生のご著書から出題がなされました。

 

小川先生は

商社マン→フリーター→市役所職員→哲学者という

異色の経歴の持ち主です。

 

小川先生のことをテレビで

見たことがある人も多いと思います。

 

NHK Eテレの「世界の哲学者に人生相談」や

「ロッチと子羊 迷えるあなたに哲学を」という

番組にも出演なさっていました。

 

寄せられた人々のお悩みに

哲学者の考えを明解に紹介しながら、

バシっと回答するすごい人です。

 

茨城県の出題は「視点を変えること」の

本質的な重要性について述べられている箇所であり、

 

山梨県の出題は、

市民活動としてのコミュニティの活発化のためには、

まずは「人が集まる」、

そのことだけでも重要であり、

 

集まることがコミュニティ活性化のための

スタートになるという主旨であり、

公共哲学分野の文章でした。

 

川瀬和也『ヘーゲル哲学に学ぶ 考え抜く力』

光文社、2022年

 

 

【埼玉県】

 

ヘーゲル哲学をご専門とする

川瀬和也先生のご著書からの出題でした。

 

課題文は、平易なことばによって語られながらも、

 

扱われる内容は普遍者の存在についての

ゴリゴリの形而上学であり、

 

「存在するとは区別されることである」という

ヘーゲル独自の存在論について説明される内容でした。

 

こういうお話がおもしろいと思う人は、

哲学に向いていると思います。

 

信原幸弘「情報とウェルビーイング」

河本 英夫/稲垣 諭 編著『見えない世界を可視化する「哲学地図」 「ポスト真実」時代を読み解く10章』学芸みらい社、2021年より

 

 

【東京都】

 

東京都の出題は、『見えない世界を可視化する「哲学地図」 「ポスト真実」時代を読み解く10章』という書籍のなかの、信原幸弘先生が著した第一章「情報とウェルビーイング」からなされています。

 

『見えない世界を可視化する「哲学地図」 「ポスト真実」時代を読み解く10章』も現代社会を理解するために非常に有益な本ですので、中高生の皆様にはぜひとも読んでもらいたいです。

 

信原先生は、「心の哲学」という分野において

我が国の第一人者であり、

 

近年はニューロフィロソフィー、

ニューロエシックス、ニューロリテラシー等の

研究に取り組んでいらっしゃいます。

 

出題箇所は、

フェイクニュースとウェルビーイングの分析から、

 

われわれがデジタル情報すなわちAIとの

同化ではなく、AIとの共生が示唆される文脈です。

 

中村雄二郎『哲学の現在―生きること考えること』

岩波書店、1977年。 

 

 

  

古田徹也『いつもの言葉を哲学する』

朝日新聞出版、2021年。

 

 

【東京都立立川高校】

 

都立立川高校は二つの著作からの課題文が出題されました。

 

中村雄二郎先生は、2017年に亡くなられましたが、

日本代表する哲学者といえます。

 

高校入試や大学入試の入試問題において、

中村先生の文章がこれまでもよく出題されてきました。

 

課題文はウィトゲンシュタインという

哲学者の考えを引きつつ、

 

「言葉は思考の肉体である」

=考えるということは、本質的に、概念と論理によってだけではなく、イメージと想像力によってもなされるという主張が展開されます。

 

他方で、

古田徹也先生もウィトゲンシュタイン研究から出発し、

現在は現代倫理学をご専門としています。

 

作問者が意図しているかどうかはわかりませんが、

中村先生と古田先生の文章からの出題は、

ウィトゲンシュタインという哲学者において共通しています。

 

古田先生の文章からの課題文は、

 

レポートや論文においても、論理や形式だけではなく、

書き手の経験や主観を書くことも

重要であることを述べている文章です。

 

大森荘蔵『思考と論理』

筑摩書房、2015年。

 

 

【東京都立隅田川高校】

 

「立ち現れ一元論」という

独自の世界の眺望のあり方を

提示する大森荘蔵は日本を代表する哲学者です。

 

現在の日本哲学界の重鎮である、

野家啓一、藤本隆志、野矢茂樹、中島義道ら

第一線で活躍する哲学者を数多く育てた

日本哲学界のいわばビッグボスです。

 

課題文は、

 

「経験の言語化とはその経験の言語的想起である」

という論考を示す、

中学生が読むにはなかなかにハードな内容です。

 

このレベルについてこられるかな。

 

山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか? 相対主義と普遍主義の問題』

筑摩書房、2022年。

 

 

 
 

【富山県】

 

山口裕之先生は、フランス近代哲学や

科学哲学をご専門とする哲学研究者です。

 

課題文は、

アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの

言語生得説を踏まえて、

 

子どもには言語を学ぶ能力が生得的に備わっている

ことを説明する箇所からの出題でした。

 

西研『しあわせの哲学』

NHK出版、2021年。

 

 

【熊本県】

 

2021年度入試において

長崎県でも西先生のこの著作から出題がなされました。

 

熊本県の出題箇所は、

他者と対話の関係を作る方法や

対話の効用について述べられている箇所です。

 

 

 

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