平成31年度 東京都立西高校
推薦選抜にもとづく作文問題
次のことばについて、あなたが感じたり
思ったりすることを六百字以内で述べなさい。(50分)
「数について何かを発見するためには、
数を転がして、ころころと手のひらで
弄(もてあそ)ぶことが一番重要なんです。」
(藤原正彦)
解答例
https://note.com/polly82jp/n/n346c5daefdc2
こちらの記事も読んでおきましょう!
・都立西高校推薦作文問題の極意
https://doctor-of-philosophy1982.amebaownd.com/posts/630159
・都立西高校 推薦入試作文の肝
https://doctor-of-philosophy1982.amebaownd.com/posts/2930969
解答への導き
H30年度の岡潔に続き、
H31に出題された言葉も藤原正彦も数学者であり、
二年連続で数学者の言葉が出題されました。
この言葉の出典は、
藤原正彦/小川洋子
『世にも美しい数学入門』
(ちくまプリマー新書、2005年)
であり、
この本は、数学者の藤原と作家の小川の対談集です。
例年どおり、まずは藤原正彦の言葉を解釈する必要があります。
ポイントになるのは、「数を転がして、弄ぶ」という表現です。
これが一体に何をすることなのか、
具体的に想像できるかどうかが鍵となります。
ステップ1 課題文を解釈する
「数を転がして、弄ぶ」とは具体的に何をすることなのだろう。
数を扱うわけですから、実際に数を足したり、
引いたり、掛けたり、割ったりすることだろうと
考えられると思います。
そうした操作を行って、数をいじくりまわしていくうちに、
何らかの規則性に気がつき、法則を見つけることができる。
藤原正彦のことばは、
このようなことを言っているのだと理解できます。
つまり、数について、弄ぶ、いわば遊びながら、
いろいろな操作を行って、
試行錯誤を繰り返すことが
大切だと言っているのだということがわかればよいでしょう。
ステップ2 解釈にもとづいた自分の主張を行う
以上のように、藤原正彦の言葉を解釈できたら、
彼の言葉を受けて、自分の主張を考えていきましょう。
上記の理解にもとづいて、今度は数についてだけでなく、
この言葉を一般化できるかどうか検討できるとよいです。
模範解答では以下のように一般化しています。
したがって、この言葉は、
ある対象に対して重要な発見をしたり、
できなかったことをできるようにするためには、
いわば自分で遊びながら試行錯誤することが
大切だと言っていると理解できる。
このように、
課題のことばを自分なりに一般化して示すことで、
自分の主張としましょう。
ステップ3 主張についての具体例を挙げよう
自分がしようと考えている主張を的確に示す例を考えましょう。
独創性というのは、ここで表現します。
独創性というと、「誰も考えつかないような素晴らしい考え」や
「これまでになかった考え」を示さなくてはいけないと
考える生徒が多いようです。
こうした考えに振り回されて、突飛な考えや奇をてらった考えを
書いてくる生徒がよくいます。
しかし、小論文/作文で表すべき独創性とは、そうではありません。
自分の主張に対して、
自分が考えた適切な具体例を示すことが独創性なのです。
具体例については、いろいろなことが考えられます。
したがって、
自分独自の例を挙げることが独創性を表現することになるのです。
そして、重要なことは、
自分の主張をきちんと体現する具体例を示すことです。
何を示すための例なのかを考えて、主張を支持する例を挙げましょう。
模範解答では、
「ピアノ演奏における演奏技術の習得」を例として挙げることで、
主張を例証しています。
以上の3ステップを踏まえて、
最後に簡潔な結論を述べれば、模範解答のような答案ができます。
参考までに
小論文対策として、この課題の小論文を書いていない受験生は、
以下の文章を見ないほうがいいです。藤原の言葉が出てくる
文脈がわかってしまうからです。
この課題文の藤原正彦の言葉が出てくる箇所を引用しておきます。
藤原:
そりゃあそうですよ。研究が進まないときは本当に苦しいですもんね。
小川:
数学者の方々の研究の苦しみっていうのは、つまり、ゼロか完全かどっちかですものね。
藤原:ここまできましたっていうんじゃ価値がない。完璧になぎ倒さないといけないんですから。たいていの場合なぎ倒せないわけですよね。数学者というのはどんな天才でもある意味で劣等感の虜と思いますよ。いつでも欲求不満。だから、僕も息子が三人いますが、数学者だけにはなってほしくないと内心思っています。
小川:とても優秀な息子さん方で、そしてハンサムなんですよ。ジャニーズにスカウトされそうになったお子さんもいらっしゃるとか。ところで、数学的な発見をするためには、何が大事なんですか。
藤原:数について何かを発見するためには、数を転がして、ころころと手のひらで弄ぶことが一番重要なんです。足したり、引いたり、ひっくりかえしたり、想像したりね。そうすると、もしかしたらこうかなという、ちょっとしたきっかけが見つかり、そこから大胆にいろいろ実験してみて、本当そうだったらいよいよ証明にかかる。証明になったらたいていの場合、もう赤子の手をひねるようなものです。そこまで、いろいろ弄ぶんですね。弄ぶというのは、独創に非常に良い影響を与えます。たとえば美しい文章を読んで理解していても、その人の宝石にならない。暗唱したり、思い出して口ずさんだり、言葉を弄ぶというのが重要だと思いますね。だから、図形で発見したければ図形を弄ぶことです。ああでもないこうでもないと、いろいろ図形を描いて考えながら遊ぶことですね。
藤原正彦/小川洋子『世にも美しい数学入門』
(ちくまプリマー新書、2005年、pp.71-72.)
・出典の「ちくまプリマー新書」について
ちくまプリマー新書は、中高生向けの新書であり、通常の新書よりもベーシックかつ普遍的なテーマを扱ったものが多いです。大事なことは、このちくまプリマー新書を出典とする国語の問題や、大学入試におけるAO・推薦入試のレポート課題用の課題文献として出題されるようになってきているということです。都立西高校、都立日比谷、進学重点校を目指す諸君は、ちくまプリマー新書を読んでおくことを強く推奨いたします。
ちくまプリマー新書(https://www.chikumashobo.co.jp/special/primer300/)
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