さて、今年も全国の公立高校入試の国語にて、
哲学・思想を扱う問題文を出題する都道府県を
ピックアップしていきます。
下記、記事において見られるように、
課題文においてよく出題された本はありました。
2020年度の公立高校入試の国語課題文において、
純粋に哲学・思想系と言えるのは、以下のみでした。
①群馬県:伊藤邦武『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』
(ちくまプリマー新書、2019.)
②香川県:出典表記は「岩崎武雄の文章より」
(おそらく、岩崎武雄『哲学のすすめ』)
③東京都立国分寺高校:猪木武徳『自由の思想史』
(新潮選書、2016.)
群馬県:伊藤邦武『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』
伊藤先生の本の引用箇所は、
天動説から地動説への転換点、
コペルニクス的転回の意義を説明する文章の一部であり、
この転回が西洋近代思想へ
もたらす意義を説明する直前で終わってしまっていますから、
あと少しでもっと面白いところだったのに!
という感じですね(笑)。
伊藤邦武先生は、
パースやジェイムズといった哲学者を中心に
アメリカ哲学の研究をご専門としています。
伊藤先生のこの本自体はざっくり言ってしまえば、
カント哲学で宇宙論を考える、という内容です。
プリマー新書でよう攻めるなぁ、と(やりたい放題、笑)。
タイトル勝ちですね、これは(悪口じゃない!)。
香川県:出典表記は「岩崎武雄の文章より」
香川県出題、岩崎武雄先生の文章のほうは、
哲学と科学との関係を説明したうえで、
哲学という営みの必要性を説く内容の一部です。
かつて、日本哲学会会長も務められ、
カント研究の泰斗でもあった岩崎先生の文章を、
「今」出してくる香川県入試委員の先生は、
渋い、かな~り渋い(笑)。
東京都立国分寺高校:猪木武徳『自由の思想史』
国分寺高校、猪木先生の『自由の思想史』は、
先生のご専門の経済学にとどまらず、
該博な知識を縦横無尽に展開し、
広く「自由の思想」を考察する重厚な本です。
岩井克人先生もそうだけれど、
日本の「超一流」の経済学者って、
なんでこんなに何でも知っていて、おもしろいんだろう!
国分寺高校における課題文の箇所も
きちんと読解するにはなかなか歯ごたえのある文章で、
アイザイア・バーリンの二つの自由概念を俯瞰したうえで、
知識論を展開する内容となっています。
これ読ませるのかぁ!となかなかの驚きを得ました(笑)。
攻めてます、国分寺!
どうも今年は、公立高校では純粋に哲学、思想と呼べる文章は
あまりないなぁと思って、
電話帳の国立・私立高校に目を向けたら、
あら!、哲学・思想系文章が目白押し!
次回に続きます!