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都立推薦入試小論文の極意 都立日比谷高校シリーズ(6)

19年12月26日

 

 

平成31年度 東京都立日比谷高校 

推薦選抜にもとづく選抜 小論文

 

―解答への導き―

 

問題はこちらより。

http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/SelectedEntrants/TestTheme.html

 

解答例

https://note.com/polly82jp/n/n96b4235cd174
 

 

こちらの記事も読んでおきましょう!

 

・都立日比谷高校 推薦入試小論文の極意

https://doctor-of-philosophy1982.amebaownd.com/posts/713391

 

・都立日比谷高校 推薦入試小論文の肝

https://doctor-of-philosophy1982.amebaownd.com/posts/2854141

 

 

―問―

次の枠に囲まれた文章は、フランス革命期(1789~1799年)において、当時のフランスの言語状況に関する問題を提起する議会での演説である。フランス革命は歴史学研究において、身分制社会にもとづく地方分権の社会であった近世という時代から、人間の自由と平等の原則にもとづいて中央集権型の国家を目指す近代という時代への転換期と位置づけられており、日本の歴史に例えるならば1868年の明治維新に相当するものと言える。そのフランス革命期には、ほかにも、古い行政区画(旧州)の廃止や、メートル法の採用などさまざまな改革がおこなわれていた。また、フランス革命には、フランス取り巻く国々との間で常に戦争状態が続いており、自由と平等というフランス革命の原則を達成するためには、対外戦争に勝利する必要があったことにも注目する必要がある。次の問1と問2に答えなさい。

 

 

問1 枠に囲まれた文章を読み、フランス革命当時のフランス社会において、30もの地方語があることがなぜ問題とされているのだろうか。図1を参照しながら、80~100字で説明しなさい。

 

問2 枠に囲まれた文章の状況から約70年後のフランスの言語状況を示す図2を見て、枠に囲まれた文章のような状況から変化があったのかどうかを明記したうえで、自分が1863年当時のフランスにおける首相であったならば、何を目的として、どのような政策を実行するのかを考えて、460字~500字で論じなさい。その際、その政策をおこなうことによって生じる長所と短所をそれぞれ一つずつとりあげて説明すること。

 

 

 

―総評―

H31年度の問題は、フランス革命期のフランスにおける言語政策のあり方を問う、非常に面白い問題でしたね。フランスの首相としてどのような政策を行うのかが問われます。問題を考えるスケールが大事です。とはいえ、資料から状況を読み取り、何をするべきか、どのような課題を見出して、どのような解決策を考えるかを説明するという点では、概ね例年どおりの形式だったと思います。大事なことは、こうした問題に「解いたことがない、考えたことがない!」といちいち慌てるのではなく、冷静に何を記述させようとしているのか、出題者から何を求められているのかを意識して問題を読み、課題を的確に判断する力です。

 

しかし、これを50分間で解答することを考えると、昨年度も日比谷の問題はなかなかハードな問題だったと言えます。文章作成技術はある程度身につけられたとしても、資料分析法や発想法を鍛えておかないと日比谷の問題は簡単には解答できないと思います。

 

 

 

―問1 攻略法―

広い意味で理由説明問題の一種と言えます。「なぜ」が問われているので、その理由を資料、文章から過不足なく示す必要があります。

 

「枠に囲まれた文章」から読み取るべきこと

・30もの地方言語があるせいで、

  • 600万人のフランス人が国民言語を知らないこと
  • フランス語の読み書きのできるフランス人が300万人もいないこと

 

 

図1から読み取るべきこと

 

最も注目するべきは、「義勇兵はフランスの様々な地域から集められていた。」という一文でしょう。そして、上記のように、当時のフランスの様々な地域では、国民言語としてフランス語が通じない。したがって、言葉が相互に通じない、あるいは通じる言語を持たない「国民」が義勇兵(というか多種の民族の寄せ集め)となって、ヨーロッパの諸国を敵に回してよく戦争ができるな!、というツッコミができるかどうかが、実はこの問題に解答するためのキーです。(しかし、時はヨーロッパ戦国時代!封建制や王権制を打ち破り、自由と平等という原則の達成を共通の目標としていたフランス国民たちは、多少言葉が通じなくてもこの目標の達成に向けて雄々しく戦ったのでありましょう!)

 

言葉が通じなければ、ヨーロッパ諸国と戦争するにあたって支障をきたすことが容易に想像できると思います。したがって、この点を理由として提示すれば、模範解答のよう解答ができます。

 

 

―問2 攻略法―

設問の指示を確認しましょう。

 

a.フランス革命期から70年後の言語状況を示す図2を見て、

革命期からの変化を明記する

 

b.自分が当時の首相だったら、何を目的として、

どのような政策を実行するのかを論じる

 

c.その政策を行うことによって生じる長所と短所を一つずつ説明する

 

まず、設問の要求には必ず従ってください。

設問の要件を満たさなければ、完答となりえません。

また、上記a,b,c以外のことを書けばアウトだと思ってください。

 

a.について

 

30もの地方言語が存在し、読み書きもろくにできない国民が数百万単位でいたフランス革命期から70年後はどうなっているのか、図2から読み取れることをまとめましょう。

 

図2から読み取れること

 

・「住民がすべてフランス語を話す県」が

全県のおよそ半数になっている

 

・「ほとんどだれもフランス語を話さない県」が16県ある

 

・フランス南部では、

国民言語としてのフランス語の普及が進んでいない

 

b.について

 

ここは、受験生がいろいろ考えてもらいところです。ただし、「対外戦争に勝利する必要があった」という必要性から考えれば、一定の方向性が見えてくると思います。以下は、模範解答作成時のプロットからです。

 

実行するべき政策:

 

フランス語の普及を狙った語学教育の実施

 

目的:

 

・国内におけるフランス語の普及を徹底する

 

・「ほとんどだれもフランス語を話さない県」などを中心に、フランス人であることの自覚を促し、フランス人として国政や地方政治に参加してもらう→中央集権国家としてのフランスの体制を盤石なものとする

 

c.について

 

フランス語の普及を狙った語学教育政策の長所、短所

 

長所:国民言語が全県に普及すれば、近代国家の成立に役に立つ

短所:地方言語が使用されなくなることによって、

地方の文化が失われる

 

長所、短所を説明する際には、

その理由・根拠も示すようにしましょう。

 

 

以上のような思考を展開して、書くべき内容を揃えたら500字以内でまとめる文章作成技術が課題となってきます。これは、訓練して身につけていかなければなりません。したがって、日比谷の小論文対策は小手先のテクニックでは対応できませんよ。繰り返しますが、文章作成技術に加え、資料分析法、発想法を身につけていく必要があります。

 

 

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