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都立推薦入試小論文の極意 都立西高校シリーズ(9)

20年08月27日

 

 

令和2年度 東京都立西高校 

推薦選抜にもとづく作文問題

解答への導きはこちら

都立推薦入試小論文の極意 都立西高校シリーズ(8)

 

なぜ、池上彰なのか。

 

以下は、

令和2年度問題の西高校出題意図についての私見ですので、

受験生が必ずしも読む必要はありません。

 

とはいえ、

解答のうえでの発想に役に立つ示唆を

含むものと思われますので、興味のある方はどうぞ。

 

池上彰が出題されたことを知って、

「なんだよ~、池上かよ~(がっかり)」と

正直思っていました。

 

西高の出題ではこれまで、

そうそうたる学者や思想家の言葉が並べられてきたのに、

池上って、「おい、西高校、おかしいだろ!」と。

 

しかし、課題文を見て考えてみると、

さにあらず。

 

この問題は、「池上的わかりやすさ」、

 

あるいは常識的には良いこととされる

「わかりやすい」という性質に対して、

いかに批判的になれるのかが問われており、

 

常識を疑うという意味で哲学的問題だと言えるのです。

 

池上彰は、自身の番組で

ともかくわかりやすくニュースを解説することに

努めてきたと言います。

 

しかし、そうした自分の取り組みが

裏目に出ていることも感じ取っているようで、

 

本当は自分のニュース解説をきっかけとして、

視聴者により深い関心を持つことや

探求の姿勢を求めたいのだというわけです。

 

ところが、彼の思いとは裏腹に、

世間ではわかりやすさばかりが求められる。

 

皆、自分に分かる、すなわち、聞いていてすっきりする、

心地のよい言葉や解説を聞いていたいというわけです。

 

こうした思いを抱えながら、

なおもテレビに出演する池上の姿勢には、矛盾を感じますが、

彼自身としてはそうした思いや考えがあるようなのです。

 

西高の出題意図は、

そんな池上の気持ちや問題意識を汲み取っての出題

というわけではもちろんないと思います。

 

大事なのは、

世間にあふれる「池上的わかりやすさ」に対する

批判的思考を展開できるか、

 

「わかりやすい」という是とされる性質に対して、

常識に反して批判の目を向けられるかどうかが

 

問われているのだと思います。

 

テレビで「わかりやすく説明をしてくれる」

あの有名なおじさんの言葉を批判的に解釈できるか、

これを西高は問いたいのだと思います。

 

つまり、池上彰を反面教師として批判せよ!

というわけです。

 

池上はただの「かませ犬」なわけです。

 

そうそうたる学者・思想家が出題されてきたなかでの池上彰、

というよりは、

 

かませ犬彰なわけですから、

西高の権威(?、笑)に傷がつくわけではないのです。

 

さて、以上のように

「池上的わかりやすさ」に対する違和や懐疑を抱くのに、

うってつけの本があります。

 

はからずも池上や池上の著作に冷や水を浴びせるようなタイトルです。

 

武田砂鉄『わかりやすさの罪』朝日新聞出版、2020.

 
 
本書から、少し引用してみましょう。

 

批評家の大澤聡が『教養主義のリハビリテーション』(筑摩書房)のなかで「読者におもねることと、わかりやすく書くこととは違う。けれど、いまはそのあたりがごちゃまぜにされていますね」と語っているが、まさにこの双方を率先してごちゃまぜにしてきたのが池上彰の話法である。池上彰の名が掲げられた番組では、必ず数名の芸能人がひな壇に並び、「この際だからイチから学びたいんです。池上さん、よろしくお願いします」という表情をしている。坂下千里子や小島瑠璃子などが、目をまん丸くさせながら新たな気づきを得る光景を、もうずっと見せられている。大澤が言う「おもねる」が可視化された状態。国内の政争であっても、中東の紛争であっても、企業の汚職であっても、それらを押し並べて端的に説明してくれる池上彰の「わかりやすさ」には「おもねる」が強い。いや、それとも、池上自身は「おもねる」ことなく、周囲がただ(そんな言葉があるのか怪しいのだが)おもねらせているだけ、なのだろうか。

 

武田砂鉄『わかりやすさの罪』p.78より引用

 

なかなか、刺激的な指摘です。

武田砂鉄は、目下、キレッキレッのフリーライターです。

 

受験生は、池上彰の著作より、

武田砂鉄の著作を読みましょう!

 

「池上的わかりやすさ」に対する

批判的観点を得られると思います。

 

 

 

 

 

 

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